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古祭玲さん
雨ニ踊ル透明人間
https://estar.jp/novels/25902043
本作は妄想コンテスト用の短編ということですから、どうしてもそこまでの栞は見込めないのは仕方ないところです。
書き出しは、すごく良いと思います。何かそっち系のゾクゾクする話が始まりそうな予感がして、先に期待が持てます。
で、ページを捲ると、着々と、自殺への道を選んで、その方向に進み始めた女性の描写が始まっていきます。
ここからは、僕個人の勝手な感想で、それが正解ということではありません。
『わたしもそうなりたかった。』
この文章がひらがなで書かれていることも含め、ここまではすごく良くて、先を期待した分、次の
「お、首つり自殺ですね! 暗く冷たい夜にうってつけのイベントだ!」
で、「えっ?」となって、さらに次のページを読んで「あなた、透明人間になってみませんか!」
で、「あーーーそっち系かぁ……」と、最初に期待した分、大きめにがっかりしました。
(;^ω^) やはり、死んだことに気がつかない主人公が……という物語は、あまりにも在り来たり過ぎですから。
おそらく古祭さんは、幽霊ではなく「透明人間」ということで、差別化を図っているつもりだと思うのですが、それならそれでもっと早い段階、
スマートフォンを持った背の高い学生を相手に、起きるはずだった接触事故が起こらなかったシーンで、
「……わたしは死んでいるのでしょうか」
と、主人公が幽霊になっているのかもしれないと思っていることを、読者に伝えてあげないとダメだと思います。
なぜなら、まず読者にとっての一般的な透明人間といえば、生みの親であるH・G・ウェルズのSF小説に出て来るものだったり、映画インビジブルの天才科学者なのではないかと思うのです。
つまり、透明人間とは、人間の肉体が空気と屈折率が等しくなったような状態なので、物に触ることも可能だし、当然物体をすり抜けることはありません。
それなのに、スマホを持った背の高い学生の身体をすり抜けた瞬間、読者には「何だ? 透明人間じゃなくて、幽霊になってるじゃん」と思われてしまうからです。
それなのに、最後まで「死んでいるのでしょうか」という台詞が無かったので、僕は、主人公が幽霊になっていることに気がついていないという、ありきたりの作品に感じてしまったのです。
おそらくですけど、この辺りを改善しないと、妄想コンテストでの入賞は無理な気がします。
次に文章的に少し気になったところを挙げて行きます。
P2
たいてい面倒くさとか、寒いとか
これは「面倒くさい」か、「面倒くさっ」の方が良いように思いました。
見えるか見えないかくらいの ~ 冬の冷たい死だ。
この文章が散文的で、繋がっていないので、
透過度をした雨粒が「、」空から一目散に逃げていて、鼠色の地面にクラッシュして死んでいる。冬の冷たい死だ。
もしくは、
透過度をした雨粒が「、」空から一目散に逃げている。そして鼠色の地面にクラッシュして死んでいる。冬の冷たい死だ。
P2
カモフラージュのために絶対いらない釘も買った。
僕、建築関係の仕事をしていますけど、ロープと釘を同時に使用するシチュエーションが思い浮かびません。
ロープ止め釘のことですかね?でも、若い女の子がロープとロープ止め釘を同時に買う方が違和感があるので、逆にロープだけ買っても、店員さんはそんなに気にしないと思うんですけど……。って、本文とは関係なかったですね。
P2
死のうかしら死のうかしら、入社からそう思いつづけて
何かおかしくないですか?
例えば、死のうかしら、それとも……でもやっぱり死のうかしら
とか、死んだ方が楽になるのかなぁ……
とかの方が、自然な感じではないかと思います。
P3
ハットを外し礼をした。気分悪いことに
ハットを外しお辞儀をした。気分「が」悪いことに
P3
「あの……」ゴッホは言葉が詰まったわたしを焦らさず
視点が主人公になっているので、台詞の後で改行した方が良いです。
「あの……」
ゴッホは言葉が詰まったわたし焦らさず
因みに、言葉「に」詰まった。の方が良いですかね。
ジムもといクラブから脱出して
もといは、前言を撤回して、改めて言い直す際に使用する言葉ですから、この場合、読点なしで続けると、読者が分かり辛いです。
ジム……もとい、クラブから脱出して
というような表現にすると、分かり易いです。
とりあえず気になったのは、これくらいでしょうか。
色々とダメ出しをしてしまいましたが、作品自体の発想は素晴らしいと思います。頑張ってください。( *˙ω˙*)و グッ!
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