胡蝶蘭さん

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【ヤマト、マジで今あの教会に行ってんだな。で、どうだったか後で教えてくれ。俺、今から塾だから】 「え?どういうこと」 すぐに返信を打ち込むことにした。 【行ってねーよ。さっきまで寝てたし】 返信を送ると、すぐに折り返しのメッセージが来た。 【嘘つけ。塾に行こうと思って家を出たら、ちょうどその時、オマエが俺んちの前を通るのが見えたから、気になって後を追いかけたら、オマエ、さっきあの教会に入っていったじゃん】 「マジか? じゃあ俺って……」 不安になってもう一度返信を送る。 【俺、ずっと家で寝てたんだけど】 【嘘つくなよ。十分前にあの教会に入っていったじゃん。朝会った時の格好だったから、あんな変なTシャツ着てるのオマエしかいねぇだろ。俺、もうすぐ塾に着くから、また後でな】 あれは夢じゃなかったのか? あっ、もしかして! 俺はズボンのポケットに手を突っ込んだ。 ――ある! 恐る恐るそれを取り出すと、あの黄色い石だった。俺は恐怖のあまり持っていた石を落としてしまった。 床に転がった石は、陽が当たってもいないのに、キラキラと輝いている。その輝きが余りにも不気味で、俺はこの石を処分しようと思った。 ――あの日から十年以上の歳月を経て、今の俺がある。 本当は教会に返すべきだったかもしれないあの石を、俺はもう一度教会に入るのが怖くて、部屋のゴミと一緒に捨ててしまった。 捨てる前に友だちに見せて、教会であった出来事を喋るべきか悩んだけど、見せると教会に行ってみようと誘われそうなので言わずにおこうと決めたのだ。 ところが夕方自宅に戻ると、石は俺の机の上に置かれていた。さすがに気味が悪くて、すぐに自転車を走らせると、隣町の池に投げ捨てた。 ところが……翌日の夕方、投げ捨てたはずの石は、また俺の机の上に置かれていたのだ。 その後、山に埋めたり、遠方の海まで捨てに行ったりしたが、結局石が無くなることはなく、俺は仕方なく机の片隅に放置したまま、やがて石の存在すら気にしないようになっていった。 その頃まで成績が良く、将来はIT関連の企業に入って、ゆくゆくは起業してなんて考えていたのに、あの日を境に公式や英単語を覚えるのが苦手になり、どんどん成績が下がった俺は、何とか受かった定時制高校に進学した。 定時制高校だから、昼間働いて夜勉強をしている生徒が多い。俺もそれに倣ってアルバイトを始めたのだが、真面目に働いているつもりなのに、何をやってもすぐにクビにされてしまった。 コンビニも、倉庫の軽作業も、スーパーの品出しも、働くところ働くところその全てで、一ヶ月程度でクビを言い渡される。 働くことがバカらしくなった俺は、高校も中退し、悪い仲間と遊びまわるようになった……。 二章を全部書くとかなり長いので、ここまでにしますが、胡蝶蘭さんの原作よりも、出来るだけ物語を進行させながら、何をしに教会にきたとか、尾行した友達は、なぜ声をかけて来なかったのかとか、読者が疑問に思いそうな状況の説明を入れてみたつもりです。 また、臨場感を出すために、教会内ではドアの閉まる音だったり、心臓の鼓動だったり、擬音を入れてみました。 あと、女の子の台詞も、一言にしないで、分けながら女の子が近づいて来る文章を差し込んでみました。 こうしたことで、胡蝶蘭さんの原作より、かなり臨場感を出せたのではないかと思うのですが、如何でしょう? 参考になりましたなら、幸いでございます。 頑張ってください( *˙ω˙*)و グッ!  チョコは次作品までお預け。
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