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ゆきののさん
こころのなまえ
葛西竜哉の書き出しバージョン。
朝起きたら、指名手配されていた。
いつもの部屋。いつもの陽射し。いつもと変わらぬ朝……のひと時を妨害する、何者かの訪問を告げるインターホンの音。
いつもの習慣で、真っ先に3Dテレビのスイッチを押してから、起き上がってインターホンのタッチパネルに触れた。
モニターに見知らぬ中年の男が映し出される。
「警察の者です。少しお話を聞かせて頂きたいのですが」
朝っぱらから、いったい何のようで警察がやって来たのか分からないが、追い返すわけにも行かない。
しぶしぶ玄関のドアを開けると、複数の男たちの一人が、警察手帳を見せつけて、こう告げて来た。
「アーサー博士でお間違えないですね?」
まるでロボットのような感情のない顔。
「ん……? いかにもアーサーですが」
「アナタに殺人の容疑がかけられています」
「な……」
刑事の口から出た言葉に、アーサーは驚きすぎて、逆に何のリアクションも起こせなかった。
「アナタには黙秘権があります」
「いや、ちょっと待ってください。そう言われてもですねぇ、まったく身に覚えが……」
「詳しい話は、警察署でお伺いしますので」
まったく表情を変えず、淡々と事務的な口調で話を進めて来る。
そこでアーサーはピンときた。この男が人間ではないことに……。
こうなると、何を言っても無駄である。
「分かりましたよ。ただ、着替えだけさせてほしいのですが」
アーサーはパジャマ姿のままだった。
「結構ですよ。どうぞ」
刑事は無表情のままで片手を上げて、部屋の中へと促す。
かくしてアーサーは、起きぬけに押しかけて来た警察官により、あっけなく逮捕されることとなってしまった。
着替える為に部屋に戻り、クロゼットのハンガーにかけてある、出かける際にいつも決まって着ていく服に着替える。
全くもって意味が分からない。身に覚えのない殺人事件の犯人だなどと……。なぜ自分が逮捕されなければならないのだ。
しかしここでどう言い訳をしようが、無駄なことは分かっている。
「手を出してください」
着替えを済ませたところで、刑事が内ポケットから手錠を取り出して、アーサーの左手首を掴む。
ガチャリと音がして、それはアーサーの左手首に装着された。
次いで、右手首に冷たい金属の感触。アーサーは手錠というものを生まれて初めてみた。
それはピピピと微かに電子音を放っている。
現代社会の手錠というやつは、逃亡でも図ればこの手枷から、冗談では済まないくらいの電流が流れるのだと聞いたことがあった。
アーサーはさらに、それを興味深く見つめる。よもや自分の手首に飾って、眺める日が来ようとは、今の今まで思いもしなかった。
それにしても、まったく身に覚えのない殺人事件の容疑者だなんて、何がどうなっているのか?
そのとき、リビングの3Dテレビが、殺人事件のニュースを告げると同時に、等身大の自分の映像が宙に浮かび上がり、アーサーはそれと向きあった。
無論あちら側には、指名手配というテロップが、胸元に飾られていて、頭の上には大きく飲食店店員を殺害と、見出しがついていた。
どうやら飲食店の店員を殺害した容疑らしい。
「行きましょうか」
刑事に促され、アーサーは浮かび上がっているテレビの映像に別れを告げ、そのまま外に連れ出される。
それにしても……。さっきのニュースの3D映像、あれはいつ撮られたのだろう?
アーサーは首を捻った。元来自分の容姿に、こだわりのない人間ではあるが、さっきの映像はあんまりだと思った。
アーサーは女性たちが騒ぐに値する実力と、そして容貌を兼ね備えた若き電脳開発者なのだから。
ヒトとアンドロイドと、そこから派生したり狭間を右往左往する、様々な種類の「人間」が、世間に混在するようになって久しい。
とりわけアンドロイドの開発は、古くから盛んであったのだが、そこへ大いなる一石を投じたのが、アーサーだった。
アーサーは研究所で博士と称され、機械人形の核である人工知能を破棄し、新たに誰も見たことのない「こころ」を替わりに頭部へと突っ込んだ。
こころは非常に柔軟な物質で、それぞれの個体が持つ製造設計の回路や癖を自在に変容し、いわゆる感情を発露して成長を促し、アンドロイドをまるっきり「ヒト」と違わぬモノにしたのである。
アーサーがもたらした核心と言う名の投石は、まさに水面を波立たせ、瞬く間に世界中に広がった。
今、自分を連行している刑事も、アンドロイドで間違いないだろう。
この男が、もう少し事務的な口調でなかったら、気がつかぬほどの精巧さ、さすが天才科学者の製作品だ。
アーサーは自画自賛し、こんな状況だと言うのに、ニヤニヤしてしまった。
こんな感じでどうでしょう? 比較してみて読みやすくなってませんかね?
そうでもなかったらごめんなさい(;^ω^)
とりあえず、長くなるので今回はこれくらいにしておきます。
頑張ってください。(*‘∀‘)ノ■ ハイ、チョコ
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