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とても小さいがゆっくりと耳に届く声は、透明感のある、でも高音でない
心地好い声で、ほんの少し震えているところに煽られる。
「十和、ちゃんと聞こえたぞ。大丈夫だ」
開いて置いていただけの手のひらを軽く閉じ十和の指を軽く握った。
「とわちゃん、手足のしびれはある?」ううん
「頭が重くてぼぉーとするんだね。体も重くてダルい?」コクン
「とわちゃん、一人暮らし?」コクン
「一晩入院だね」
指がびくっと動き、十和がタケを見る。俺を見てくれよ。
「あのね、熱中症って怖いんだよー。水分塩分を補って、血液検査の数値が問題なくなっても、ハイ完治とはいかない。1週間から1ヶ月、夏バテのような症状が後遺症としてでることもある。だから今日は一晩入院して。
点滴終わったからと言って一人暮らしの部屋には帰せないです」
最後だけ丁寧語で医者っぽく言ったタケを見ていた十和は
また下を向いてしまった。さっきより力を加えて指を握ってやる。
「ねぇ、とわちゃん聞いて。考えてみてよ。家で安静にって言って帰ってもらってもね、一人暮らしの人は安静に出来ないんだ。最低限の飲食物は自分で準備するでしょ?それに機械がするからって洗濯するかもでしょ?それってもう安静じゃないんだよ」
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