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Two
えっと…ここ…どこ?
ゆっくりと目を開け周りが見えてくると、知らない部屋。
まだ霞む目とぼんやりした頭で、見回し考える。
…病院?…あっ倒れたのかな、私。
アルバイトが終わって駐輪場に行くと、自転車のタイヤがパンクしていた。
店に戻って相談しようかと思ったけど、忙しい時間だから声を掛けずに
そのまま歩いて帰る事にした。暑いけど、歩いて20分くらいの距離だから問題ないと思っていた。
昨夜から水分補給が足りなかったのかもしれない。
校正していて寝落ちしてしまったから。アルバイト中も今日に限ってあまり飲まなかったかも…。
「目が覚めたか?」
突然、足元から男の人の声がしてびっくりした。
恐る恐る声の方を見ると、お医者様ではなさそうで慌てる。
…どうしよ…誰…?
「ふっ、慌てるな。俺はお前をここに運んだだけ。
これ以上は近づかないし、何もしない」
ゆっくりとした低いけど甘い、そんな声が耳に届く。
黒髪をツーブロック×オールバックスタイルに整え、美しい切れ長の目が印象的な人だ。
すぐに目を反らし言葉を発しない私に、苛立つ様子を見せる事なく
「点滴終わりそうだな。医者呼んでくる」
そう言って彼は静かに病室を出ていった。
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