アフターコロナ 2023

「つまらないな。せっかくリュウがいっしょにサイクリングに行ける年になったのに」とパパは云う。ぼくもそう思う。

　だけどさあ、だけど、パパはもうサイクリングに行く気持ちをどこかに忘れているみたいなんだ。

　パパの顔ずっと曇りだ。ぼくはそう思ってトイレでおしっこをした

　ここが肝心だ。なにしろ、あのビニールの防護服を着るとなると、学校へ行くまでに、立小便なんてできないからな。
　ぼくはトイレの水を流し、そして玄関にむかった。

　玄関のくつぬぎの場所にあるのは、あとからつけた減圧室だった。
　大人はクリーンルームと云っている。

　すべての家庭に滅菌室を　という公約をしたのは、去年総理大臣になった熊田だ。どこの家庭でも外から帰ったら、その部屋で防護服を脱ぎ、ウィルスをひとつ残らず落としてから、部屋に入ることが重要だと云って、金をだすからバンバン作りましょう、ということになった。

　その言葉で、あとづけ出来るユニット型の滅菌ルームがどこの家にも急遽つくられたのだ。