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家から出る時には問題ない。その滅菌室で除菌されてハンガーにかかっている防護服をその部屋で着るだけだから。
ぼくは宇宙服みたいな薄いグリーン色のその服を足から履いていく。
「下半身だけだと、まるでゴム長ね」とママがそばにきて云った。半透明なクリーンルームの壁越しに、ママは悲しそうに見ている。
じいちゃんが履いていたゴム長。あれにそっくりだからだろう。
ぼくは笑った。
「じいちゃん、ほんとゴム長似合うよね」
じいちゃんは自分のレンコン畑でゴム長を泥だらけにしてレンコンを掘っていた。
「そうね」とママの声は寂しそうだ。
コロナ大流行中にレンコン畑で防護服で作業していたじいちゃんは体を悪くした。息が苦しかったらしい。血液がドロドロになり、心臓の血管が詰まったという。それ以来じいちゃんの元気な姿はもう、見られないからだ。
ぼくはゴム長の上にさらにつながる上着に肩を入れる。着ぐるみみたいだけど、何の着ぐるみ? ぼくは昔読んだSFを思い出す。
宇宙人みたいだ。
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