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うちの妹
うちには妹がいる。
「お兄ちゃんっ!早くお家帰ろう?一緒にゲームしようよっ」
明るく、元気で、すこしおっちょこちょいな俺の妹。
俺はそんな妹を見つめる。
「なに?お兄ちゃん?早く帰ろうってばぁ~」
そんな俺を見て妹は笑顔で俺にそう言って再び手を取り、走り出した。
あの頃とは逆に、俺の手を引っ張って・・・
俺の名前は柊 春斗。
んで、この俺によく懐く妹は柊 司。
俺が小さいころに司はうちの家に引き取られた。
司の両親は交通事故で無くなってしまったらしい。
その後、いろんな施設をたらい回しにされた司を俺の親父が引き取った。
家に来た当時の司は誰ともしゃべらず、他人に対して壁を作ってる感じだった。
俺は親父から「司ちゃんは辛い目に遭ったんだ。だから司ちゃんの支えになってあげるんだよ?」と言われて、俺は司のそばにずっといた。
支えになるって言われてもどうすればいいか当時の俺にはわからなかった。
だから俺は司のそばに居ることにしたんだ
別に俺を嫌ってもいい、ウザいと思われてもいい。
ただ、ずっとそばに居て「一緒に遊ぼう」と誘ったりとか「これやるよ」とお菓子をやったりしただけだった。
特別なことなんて当時の俺にはできなかったし。
どう扱えばいいかなんてわからなかった。
でも、司が可哀そうだったから。
だから俺はずっとそばに居た。
そんな暮らしを続けてしばらくした時。
司が俺に口を開いた。
「お兄ちゃん・・・ありがとう・・・」
消えるような小さい声で泣きそうになりながらそう言った司を見て、俺は親父の言葉の意味を理解した。
「支えになってあげる」って言うのは別に特別なことなんてしなくていいんだ。
ただ、苦しんでいる人のそばに居てあげればいいんだって。
俺は司の手を取り、走り出す。
「一緒にあそぼうぜ?司っ!」
俺がそう言うと司は小さな涙を流しながら握った俺の手を強く握り返し、小さな声で「うんっ」と頷く。
それから俺と司は何をするもどこへ行くも一緒だった。
友達からは「おまえいつも妹といっしょだなぁ」ってからかわれたりもしたけど。
でも、俺は別に嫌じゃなかった。
俺は司が必要だと言ってくれる間はそばに居てあげようと決めたから。
それが俺が司にできることだから。
だから俺は今日も司と一緒にいる。
司の支えになれるなら俺はずっとそばに居ると決めた。
「ねぇ・・お兄ちゃん・・・ずっと一緒にいてね?」
この、可愛い妹の支えになれる限りずっと・・・
「えへへ、お兄ちゃんっ!大好きだよっ!」
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