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 河上燿子(かわかみようこ)は七年前、東京の美術大学の彫刻科を卒業してすぐにジローのもとで弟子として働き始めた。 燿子は元々人形に興味を持っていた。燿子の実家には二体のビスクドールがあった。一体は、ドレスと帽子を身に纏ったプラチナブロンドの長い髪の女の子で、燿子にと祖母から贈られたものであった。 もう一体はセーラー服を身に纏ったブロンドの少年のビスクドール。これは年子で産まれた弟へのものであった。どちらも大きな青い眼を持っていて美しかったが、燿子は少年のビスクドールに魅了された。 一度だけ、母親に少年の方を欲しいと言ったことがあったが即座に拒否された。それはある意味仕方が無いことであった。 弟は、生まれて二ヶ月で亡くなってしまったのだ。原因不明の突然死であった。母親のつま先から頭の天辺までその全ては、弟のことで一杯で、燿子の入り込む隙間などなかった。 少年のビスクドールは、母親にとって弟そのものとなっていた。弟の部屋にケースに入れられたその少年のビスクドールを、燿子が見ることができたのはほんの数回。 燿子は、脳裏にある残像を手がかりに自分で作るようになっていった。
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