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 就職活動をしながらも、人形制作を諦めきれない燿子は、自分の制作した人形の写真を集めたポートフォリオを作り、駄目もとでジローの工房を訪ねることにした。ジローの作品集の後ろに、教室の生徒募集と共に工房スタッフ募集の記事が載っていたからだ。 あの展示会から一年が経っていた。すでに募集はしていないかもしれないが、燿子は意を決して電話をかけた。すると、電話口に出た事務担当だと推測される男性は、平日ならいつでも持ってきて良いと言ったので、さっそく翌日の約束を取り付けた。  工房は鎌倉駅の数駅離れた静かな住宅街にあった。駅から近いにも関わらず、山や自然も豊富に残されている。"アトリエ・ジロー"と書かれた表札を見つけ、インターフォンを押した。 『どうぞ』 インターフォンから聞こえてきた声は、電話をした時に対応してくれた人と同じであった。 燿子はジローに会えるなどとは思っていなかった。スタッフの人がポートフォリオを受け取ってくれるのだろうと考え、上手く挨拶をしなければと意気込んだ。
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