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木製の大きな玄関扉が開いたのと同時に燿子は喋り出した。
『は、初めまして。河上燿子と申します。この度は突然電話したにも関わらず、ご対応いただきありがとうございます。こ、これがポートフォリオです。ジロー先生にお渡しください。よろしくお願いします』
お辞儀をする恰好で、ポートフォリオを差し出し、下を向いたまま一気に言葉を放った。
『リクルートスーツって地味だね』
思いもよらない返答に、燿子は勢いよく顔をあげた。
『ああ、その分、素材の良し悪しがわかっていいのかもね』
目の前に立っていたのは左目が青色で右目が深緑色の長髪の男性。紛れもなくジロー本人だと思われた。
『ジロー先生ですか?』
『キミ、面白いこと言うね。僕のアトリエに僕に会いに来たんでしょ?』
『すみません。先生のお顔をちゃんと知らなくて』
燿子はジローの人形のことばかり意識していたのでジローの顔を調べていなかった。なんという失念であろう。
『ふーん。まあ、いいや。入って』
ぺたぺたと雪駄を履いて歩くジローの後をついて行った。燿子は丸テーブルの置かれた応接室に促され、座った。
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