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御堂筋線
あるとき、御堂筋線に乗った。
激混みである。
しかも、最後尾の車両の一番うしろである。
私は呪文使いなので、無問題であったが、目に入った女の子が背広軍団に埋もれ、下を向き、オドオドと困っているように見えた。
全く知らない女の子ではあるが、ここは一発、呪文の出番である。
私はその子に向かって
「大丈夫?」
と、ただ、一言、声をかけた。
すると、その呪文はみるみる効果を表したのだ。
その子の周りの背広男共が一斉に手を上げたのだ!
『俺じゃ、ないッス』
『儂しとらんで』
『冤罪反対!』
という声が聞こえるかのように、みんな両手を上げて降伏のポーズ。
そんときはそんなつもりでなかったし、まさかそんなに大勢の背広が手を挙げるとは思わなかった。
でもな、呪文なかったら、
お前ら気付きもせんし、
助けもせんし、
何なら女の子にカラダが当たってラッキー
ぐらいに、思うてたやろ!
追記しておくと、その女の子からホッとしたような顔で、ちょこんとお辞儀をもらったのである。
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