バスの中

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 カーテンを吊るす。十センチほど長すぎるそれは春の風に揺れ、ずず、と床を掃く。 「わかってはいたけど、やっぱり長かったなあ」 「そうだねえ。でもとりあえず当分はこのままかな。部屋が片づいてきたらミシンでガーッとまつっちゃうから、悪いけどそれまでは我慢してね」 「急がなくていいよ。踏まないように気をつければいいんだし」 「うん、ありがとう」  日中は会社の彼、PCとインターネット環境さえあればどこでも行える仕事の私。  過ごす時間の長い瑞樹さんが好きな家具を買い揃えればいい、と言ってくれた彼に甘え、テーブルも椅子もチェストも、冷蔵庫も洗濯機もストーブも、何もかもかわいらしく女らしい色で揃えたが、カーテンだけは地味な薄灰色のものにした。彼には「防犯になるから」と伝えてあるが、本当の理由はそうじゃない。  揺れる、カーテンの裾を見ている。  頭の中で音楽が鳴る。
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