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旅立ち
5日目予想通り5本の白バラが届いた。
「5本のバラの花言葉は『大きな愛』」
美弥子はばあやに大きめの花瓶を用意してもらった。
「もう、水を汲むのも難しいわ」
大きな花束となった白バラを愛でながら、美弥子はそっと呟いた。
「6本のバラは『あなたのものになりたい』」
美弥子は恥ずかしそうにうつむいて、顔を赤らめた。
「女性に対して送る言葉ではないわね」
バラが届くようになって一週間がたった。「7本のバラは『貴女に夢中』」
美弥子は仰向けになってそっと目を閉じた。
「本当に。私の中身はあなたで占められてしまったわ。わたしの方こそ貴方に夢中……」
8日目のバラは8本
「8本のバラは『あなたを支える』」
美弥子は花瓶には入れずに8本のバラを胸にかきいだいた。
「ええ、今やあなたは私の心の支え」
美弥子の頬をツッと涙が伝った。
「9日目……バラは9本……?」
「ええ、お嬢様。9本確かに届いておりますよ」
老婆はもはや目の見えなくなった美弥子の耳元でささやいた。
「9本のバラは……『永遠に一緒にいたい……』」
圭吾のメッセージを受け取って、美弥子は静かに旅だった。
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