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美弥子の想い
脱け殻のようになった圭吾のもとに24本の白バラが届いたのは、それから2週間後のことだった。
添えられていた封筒からは、圭吾の学生証が出てきた。
急いで同封されていた手紙を開く。
「突然のお便りに驚かれたことでしょう。
わたくしの命の尽きる前にどうしてもあなた様にお伝えしたいことがあり、筆をとりました」
震える文字から、死期を悟った美弥子が自ら書いたものに相違ないと圭吾は確信する。
「あなたに出会う以前のわたくしは生きてはおりませんでした。苦しみから逃れるすべもなく、ただただこの息の止まるを待つ日々。
わたくしは全てに絶望しておりました」
圭吾は思い出す。出会ったときの美弥子は確かに生気のない人形のようだった。
「次第にわたくしはあなた様が訪れるのを日々心待ちにするようになりました。
床を離れ、髪をすき、鏡に向かい紅をさしました」
顔色が良くなったと思ったのはそのせいか。病が回復したわけではなかったのか。
圭吾はギリッと奥歯を噛み締める。
「あなた様の手帳を繰り返し読みました。
圭吾様、わたくしはあなた様に恋心を覚えておりました」
それは俺も、と言いかけて、圭吾は大きく息を吐く。
「あなた様にいただいたお言葉を胸に、旅立つことをお許しください。
この花を区切りとし、わたくしが旅だった後の世にあなた様のお心が惑うことのないよう、心から祈っております」
圭吾は花言葉の本を繰った。
「24本のバラは……『不変の愛』!!」
美弥子を描いたスケッチブックの前で、圭吾は泣き崩れた。
絵のなかで美弥子は静かに微笑んでいた。
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