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プロローグ
二人は幼稚園に入った頃から一緒だった。
「かがみ!かがみ!私、かわいい?」
「うん!きさきちゃんかわいい」
小学校に入ってからも一緒だった。
「かがみ!どう?私、かわいい?」
「うん。とってもかわいいよ」
小学校の高学年になっても一緒だった。
「鏡!かわいい?私、かわいい?」
「あ~、うん。かわいい」
中学校に入っても一緒だった。
「鏡!ねえ、私、かわいい?」
「はいはい。かわいいかわいい」
高校に入っても一緒だった。
「鏡・・・・・・。私、かわいい?」
「はっくしょん!花粉きついなあ。
え?ああ、はいはい。妃はかわいいよ」
だから、根村瀬妃は鏡マコトに問う。
自分がマコトにとってどういう存在なのか。
マコトの言うかわいいは、一般的に言うかわいいなのか。
それとも、特別なかわいいなのか。
確かめるため。
呼吸を一つ。
拳を握りしめ。
全身をこわばらせて。
ただ、視線は恐怖からそらすように伏せ。
いつもの質問に、ほんの一言を加える。
「鏡、私、世界で一番かわいい?」
世界を変える魔法の一言。
それは、楽園からアダムとイヴが追放されるきっかけとなった知恵の実のように甘美で、場合によっては妃を殺す毒薬でもあった。
もしも世界で一番かわいいと言ってもらえたなら、妃はマコトにとって世界一の特別な存在と言うことになる。
二人の関係は変わるかもしれない。
けれど、特別同士の二人ならその変化は、きっと妃の望むものだ。
妃の言葉に、マコトは少し怪訝な顔をした。
何かを思い出すように、考え込むように空を見上げる。
そして、頭の中の電球のスイッチを押し上げるように、ピン、と人差し指を立てて言った。
「世界規模だと分からないし、個人の好みもあると思うけど。
とりあえずこの学校だと、1-Bの白雪さんがダントツだな。
元子役だけあって顔立ち整ってるし、あの子、顔小さいよな体のラインもすげえ綺麗だし。
周りが騒ぐのもわかるよ。うん」
世界は、変わった。
「おのれ!白雪姫子!」
嫉妬の鬼の狂乱の声が響き渡る修羅の世界へ。
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