エピローグ

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エピローグ

「次の嫌がらせは原点に戻ろうと思うの」 「どうぞ~」 意気込む妃の声に、りんごのやる気のない声が答える。 「りんごちゃん、なんか不機嫌?」 「別に~、私ハブにして姫子ちゃんと二人でお洋服買いに行ったこととかあ?  まったく気にしてないって言うかあ?  私のいないところで二人だけで仲良くなって良かったね~みたいな~」 「違うから!あれはたまたま日雇いのバイトで一緒になって、流れでああなっただけで。  りんごちゃんを仲間はずれにしたわけじゃなくてね」 「わかってるよ~。わかってますよ~」 「分かってくれてない言い方だよね!  この埋め合わせはちゃんとするから機嫌直してよ」 りんごとしても、本気ですねているわけではない。 本気度は60%いや、70%・・・・・・73%位かもしれない。 嫉妬的なものは確かにあるのだが、それよりも二人がまっとうに仲良くなって、嫌がらせとかそういう建前的なものなしで遊べるようになれば良いと思っている。 それは、妃の友人としての思いであり、また、姫子の友人としての思いでもある。 「それで、原点?ってなんのこと」 「勿論白雪姫子への嫌がらせの原点よ」 意気揚々と胸を張る妃に、りんごは困ったようにため息をつく。 友人達がまっとうな友人になるには、まだ少し時間がかかるらしい。 「嫌がらせの原点といえば、下駄箱!  白雪姫子の下駄箱にカエルをいれるわ!」 次の日の朝 「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」 「いいですよ。  ちょっと驚いただけですから」 下駄箱で必死に謝る妃と、それを宥める姫子の姿があった。 「本当にごめんなさい。  白雪姫子がカエル苦手だなんて知らなくて」 相手の苦手なものを下駄箱に入れるのが嫌がらせである。 「次はうつぼかオオサンショウウオ辺りの編みぐるみを作ってくるから  それなら大丈夫?」 ついでに相手のリクエストを聞くものではない。 二人の様子をあきれながらりんごが見ていると、背後から声をかけられた。 「妃と白雪さん。何かあったのか?」 ある意味でこの騒ぎの元凶とも言える男、鏡マコトである。 「この間言ってた嫌がらせ。  妃ちゃんがカエルの編みぐるみを姫子ちゃんの下駄箱に入れたの。  それで、下駄箱を開けた姫子ちゃんが「きゃあ!」って叫び声をあげちゃったの。  それ聞いて妃ちゃん動転して、姫子ちゃんとこにすぐ駆け寄って、あの調子って訳」 「嫌がらせ?」 「下駄箱にカエルを入れるっていう嫌がらせ」 実際にカエルを下駄箱に入れるのはカエルがかわいそうだし、姫子がびっくりしてしまうから、編みぐるみのカエルをいれることになったのだ。 それを聞いてマコトは首をひねった。 「そもそもが、なんで妃は白雪さんに嫌がらせ?なんてしてるんだ」 「・・・・・・、ねえ、鏡君、鏡君。  世界で一番かわいいのは誰?」 「妃も前言ってたな。  とりあえず、この学校内なら白雪さんがダントツだと思う」 「なら、鏡君にとって一番大切なのは、誰?」 「そりゃ、妃だよ。  小さい頃から一緒だし、隙が多いから守ってやらなきゃって意識もあるし」 「そういう所だよ」 りんごがささやかにため息をつく。 予想通り、マコトが妃を振るなんてありえなかった。 言葉の掛け違いというか本当に些細なすれ違いにすぎなかったのだ。 いや、一方的な妃の独り相撲である。 「まったく、めんどくさい」 「何か困ってるなら、協力するぞ。  俺にとってはりんごだって、大切な友人(ひと)なんだから」 「そういう所だよ!!」 なにやら怒りながら肩を怒らせて歩いて行くりんごの後ろ姿を、マコトは見送る。 りんごが機嫌を損ねた理由は分からないが、なにかしらのフォローを考えないとと思う。 マコトの視線の先では、早朝下駄箱で3人の少女がかしましく騒いでいる。 「実はその編みぐるみ、お揃いで私のも作ってて」 「あっ本当です。じゃあ、すぐに鞄につけちゃいます」 「ちょっと、妃ちゃん。私のは?私のは!?」 鏡よ、鏡。 真実を映す鏡。 目の前の3人の様子を、マコトの瞳はくっきりと映す。 マコトは一人うなずいて、つぶやく。 「仲が良くて何よりだ」 妃が白雪姫子に嫌がらせをするのを止めるのは、もう少し先になりそうである。 終わり
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