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 マンションを出ると、雨が降り始めた。  アンドロイドは機械だが、特殊なコーティングで水を弾いている。とはいえ、これから廃棄処分になるアンドロイドには関係ないことだった。  マンションの前に、巨大なトラックが停まっていた。あの荷台に廃棄予定のアンドロイドを乗せるに違いない、と私は思った。  アンドロイドが後ろに回り、荷台を開ける。すると中には既に二体のアンドロイドが手錠をつけられた状態で座っていた。一体は男性型、もう一体は女性型だった。私に視線が集まる。どちらも顔が暗く見えるのは、荷台の中にいるからというだけだろうか。  「では、入ってください」  そう言われ、私は荷台に足をかける。だがすぐに私は足を下ろしてしまった。 「どうかされましたか」 私は今出てきたばかりのマンションを見上げる。無意識に7階を捉えていた。そこは伊東様の部屋がある階だった。 「寂しいです」  悲しくても涙は出ない。体はロボット、心は人間。そんなアンドロイドである私が今吐いた言葉に、正常なこのアンドロイドは何と返すか。私なら、慰めの一つでもかけるかもしれない。私はこのアンドロイドに慰めてもらいたいのだろうか。  しかし言葉は返ってこない。早く乗れとせかされている気がしたので、私は諦めて荷台に乗ることにする。  再び荷台に足をかけた、その時だった。  誰かが私の腕を掴んだ。私はその腕に見覚えがあった。 「伊東様」 「逃げるぞ」  伊東様が私の腕を引っ張り、勢いよく走り出した。  待ってください、と止めるべきだった。しかし何も言えなかった。やはり私はもうただのアンドロイドではなくなってしまった。  私はこの瞬間、たしかに嬉しいと感じてしまったのだ。
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