待宵草

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翌朝、職場に着くなりスタッフルームにいたケアマネに声を掛ける。 「あの、昨日はすみませんでした」 「ん?何の事」 口角上げながら振り向くケアマネにしっかりと詫びを入れると慎重にをした。 「昨日のトイレ誘導の件なんですけど」 「ああ、リハパンに変えてくれるんだよね。最悪パットの交換だけで済むから楽になるよ」 「....いえ、日中は今まで通りでお願いします」 「は?」 眉間に皺を寄せるケアマネに一呼吸置いて話を始めた。 「夜間だけ。ということで、とりあえず」 「えー、昨日みんなで話したじゃん」 「当の本人はまだ抵抗があると思うんです。夜だけというなら気持ち的に楽だし、お試し気分で慣れて貰うところから始めましょう。金銭的な問題もあるので家族にも勧めやすいんじゃないですか?」 「そりゃあ、ねえ」 「じゃあ、そういうことでお願いします」 煮え切らない態度のケアマネをその場に残し、私は昨日話をした入居者の女性に会いに行く。 彼女の生き方は彼女が決めるべきだ。 受け売りの言葉。 それでも、不思議と私の心は晴れていく。 「夜だけ?日中はトイレ行っていいのね」 「夜だって行っていいですよ、その代わり何かあったらすぐに呼んでくださいよ」 はいはい と笑った顔は昨夜の物とは比べようがない程綺麗な笑顔だった。 私はこの仕事が好きだ。 当たり前の事をしているだけなのに、感謝をされる。普通には出会えない人生の先輩方と会えて、沢山の事を教えてくれる。 こんな私を必要としてくれる。 だから私も、もう自分を殺すのはやめる。 言いたいことは言うし、やりたいことはやる。必要としてくれる人の為に今は恐れず声も上げる。そのきっかけをくれたのは紛れもなく彼の言葉のおかげだ。
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