鯉噛み村【短編】【下品】

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◇◇◇  目の前で鯉がぱくぱくしている。  ぱくぱくの鯉が目の前の直径1メートル深さ1メートルちょっとくらいありそうな木桶の中にそれぞれ1匹。動きを制限するためかエラをテープで止められた状態で横向きにぷかりと浮いていた。  ……。なんか哀れだな。  佐々木さんは羽織袴姿で御幣、白い短冊みたいなものがふさふさした奴を鯉の上でバッサバッサと振りかぶっている。ぱくぱく。シュールすぎ。  俺もタカも白装束で神妙な感じで正座待機。なんか切腹する気分。いろいろな意味で。 「じゃあ、始めて」 「いや、始めてって言われてもどうしたらいいんだよ」 「その桶の中入ってさ」 「まじで!? 雑じゃね?」  佐々木さんが寄ってきて耳元で言う。 「村長に見られたいわけじゃないでしょ? 鯉に入れたの確認したら追い出すからさ」 「え、じゃあそれで終わりでよくね?」 「駄目なんだよ、あの人出てるか最後に鯉の口の中を確認するんだよ。最初はやってるか確認するために透明水槽にしろとかいってきたんだよあの人」 「なんだその変態」 「あとそれ着たまま入っていいからさ。前の合わせをずらして挿れて。見られたくないでしょ?」 「ああ、これそういう配慮なんだ」  恐る恐る桶の中に入る。  ぴちぴちしている。冷たい水にすっかり萎える。もともと勃ってはいなかったが。  ぱくぱくしている。唇? にふれてみる。案外固い。
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