鯉噛み村【短編】【下品】

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「ていうかこれ全員やってんの? エロババアが好き勝手言ってるだけじゃないの? 親父は内容知らないっつってたぜ」 「え、そうなの~?」 「まあ、今村にいる人は中野(なかの)さん以外は俺と村長しか詳しくは知らないないはず」  佐々木さんの説明だと昔は真面目に神事としてやってたようだけど、戦後に流石に常識的に考えてやめようという話が出た。ところが当時の村長がブチ切れて大反対した。それで神事続けるなら村を出るという人が続出したから、村を出て行く人にだけ行うことになったそうだ。村長、血筋かよ。  そういう経緯なので、村に残った大人はやったことがなくて、当然こんな恥ずかしい伝統は子孫に伝えることもなくて、神事に関わる村長と宮司しか知らなくて、出て行った人はこんなおかしな神事がある村には当然戻って来なくて村の人口はどんどん減る一方で、中野さんみたいな鯉を忘れられない人が夜中に神社に忍び込んで佐々木さんが止めてもセルフ奉納しているらしい。  げぇ、中野さん変態かよ。 「そんなわけだからとりあえず諦めて今日は池の鯉眺めていって」 「ちょ、ま、話聞けよ」 「2人とも大学合格したんでしょう? 村に残るならともかく外に出るならどうしようもないんだよ、村長の判子がないとさ。可哀想だと思うけどさ」 「汚ねぇ、せめて受験の前に言ってくれ」 「言ったら落ちてたよ」  よく考えたらそうかもしれん。合格したら鯉に出さないといけない。何その罰ゲーム。俺は正直エロいキャンパスライフ夢想して勉強してたから、やる気は間違いなく削がれるな。
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