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「測れたか?」
「あ、うん、17センチ」
「ぶっ」
でけぇな。大丈夫かな。
ええと、プラス5センチで22センチ×5で110センチ。
よかった、いた。でもそのサイズは1匹だけ。
「タカ、お前の嫁が決まった。あの灰色の1番でかいやつだ」
「ええ~どうせならカラフルな方がいいんだけど~」
「ちん○砕かれるぞ」
俺は90超えの同じくらいのサイズの中からなるべく口のサイズが小さそうなやつを探す。妙に派手な虚ろな目つきの錦鯉が該当した。
「テルの嫁奇麗じゃない?」
「嫁言うな」
「君ら、あんまり大きいと大変みたいだよ。番を選ぶのは奉納者だから駄目とは言わないけどさ」
「好きで選んでるんじゃねぇ。いろいろあってこれにするんだよ」
いつのまにか佐々木さんが後ろにいて俺らが指定した鯉をでかい網ですくってポリバケツに入れた。
このまま鯉の泥抜きをして清浄な水で清めるらしい。
「神事ってのはいつやるんだ?」
「まあ、泥抜きと清めるのに1週間前後かね。それ以降なら大丈夫だよ」
「じゃあ1週間後。とっとと終わらせたい」
「これ前の日に神社に泊まってもらって君らもお堂で禊するんだよ。だから来週の金曜の夜に来て。晩御飯は精進料理用意するから」
「本格的だな」
「神事なのは神事なんだよ、本当に」
「早く廃れるといいな」
「まあ、俺も心からそう思うよ、鯉に突っ込んでるの見るのやなんだよ。俺が毎日餌やってるからさ」
宮司の背中に哀愁が漂っていた。
動物虐待だってどっかに通報したいらしいけどやらせてるのが自分というジレンマがあるらしい。
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