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その絵面の不細工さにまた頭を抱えたくなった。
俺が着ているブラックシャツには、所々油のような何かが擦り付けられている。それが何なのかを想像したくはない。
無駄な想像をしないためになら、昨日の惨劇が忘れ去られていることにも感謝できた。
というか、そんなことよりもなぜ俺は性欲もそそられない女に縋りつかれている。
しかもおそらく帰路の途中だったに違いないが、記憶はすっぽりと抜け落ちていた。
抜け落ちているのにしっかりと二日酔いは引きつれている。最低の朝の完成だ。
チラリと視線を動かして、昨日と同じように俺の左手に巻かた時計を目視し、安堵する。
前回記憶を失くしたときは何故か、二年間一度も掃除を施されていないケンタロウ家のクソまみれ便所の中に突っ込まれていた。
おそらく誰かがぶっこんだのだろうが名乗り出る者はいない。
俺が長年愛用していたオメガのシーマスターは死んだ。深海をマスターできたところで汚物に塗れたそれを腕に香らせる気にはならない。
海はプランクトンの死骸臭くとも人間のクソ臭くはないだろう。おまけにゲロでコーティング済みだ。
それ以来何があっても時計は外すまいと決めた。というか記憶をなくすまで飲まないと決めていたはずだ。
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