シアターリスト 「永遠と瞬間」

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カラオケには相変わらず慎之介をモンスターにした曲が流れていて、蒸し暑い室内も何の変化もなかった。 そのくせに、その中にいる俺と慎之介と朝佳だけが、妙な間合いに引き込まれていた。 「ウイスキーロックです」と呟く声があまりも冷静で、こちらが唖然としている。全裸のまま俺の上に跨った慎之介も言葉をなくしているようだ。 両者とも動くこともできずに、朝佳が華麗なる手さばきで残っていたグラスを回収して行くのを見た。 「淫行はラブホテルで、お願いします」 そうして去る最後のセリフに、サークルのメンバーがヤジを入れたのは言うまでもない。 「ホモだと思われた?」 ケラケラ笑う男が無責任に囁く。うんざりして乱されたベルトを直した。 お前は今日一瞬の恥でも、俺は今後に関わる失態だと言うべきか逡巡してやめた。話すとなると俺はまたここ以外の朝佳との関わりのすべてを話すことになる。そんな面倒はご免だった。 「冗談キツイわ」 「はは、もうちょいで脱がせそうだったのに、惜しい」 恐ろしいことを笑顔で言う男の後ろで、誰よりも惜しい顔をしている巨乳を見た。 お前の差し金か、とぼんやり見上げると「私が脱がせようか」と呟かれて、うんざりした唇を隠すようにウイスキーを口に含んだ。
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