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「ハルチさぁん~、いつになったらキホと遊んでくれるんでしゅか」
回ってないのか、それともわざとなのかもわからないような呂律を何とかしてから出直して欲しい。
「今度な」
もう何度も呟いた言葉を呆れながらもう一度呟いて、永遠に来ない今度を思った。
人間には来る今度と来ない今度があるらしい。
俺の場合女に対する今度という約束はほとんど永遠に訪れないに等しい。
会いたければその場で交渉するのがベストだ。
相手に思考する隙を与えぬままに提案する。それこそが成功の秘訣らしい。その話をしていたのは誰だろうか。
「えーん、じゃあ、じゃあっ、いつ行ってくれるんでしゅかぁ」
少なくともキホではない。
「さあ、10年後くらい」
「ぐはっ、ひどいですぅ……。ケンタロウさん、ハルチさんがいじめるぅ」
ぐすぐすと鼻を鳴らしながらゴジラのように足音を鳴らして歩く女は、本当にゴジラのようだった。これからアイツの名前はゴジラでいいのかもしれない。
全身で”傷ついていますアピール”をかましてくる女を酔ってもいない目で見るのは、本当にキツイ。無理がある。
それも自分に関わることでそうなっていると思うとまた気が落ちた。こいつは俺のテンションを下げる天才なのだろうか。
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