シアターリスト 「永遠と瞬間」

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まるで唾でも飛ばしそうな勢いで叫んだ慎之介が笑いながら煙草を噛む。その動きに倣うように煙草を口に付けて、もう一度吸い込んだ。 予定していた通りに流れる曲は今日もブルーハーツ。俺の心臓をぶち抜いてやまない男たちだ。 その音が今日も穢されていくのを聴きながら、俺は次に降りかかる災難を思っては濡れた灰皿に煙草を擦り付けた。 「ハルチのイッキが見たくて~~?」 ご丁寧に初っ端から俺に振った女が笑う。 絶妙にずれたピッチの中、サイケデリックが揺れる。 合いの手を打つ誰もが俺の腕を引いてわざわざ薄型テレビの前に俺を曝け出した。 慎之介は相変わらず俺が座っていた席の横で煙草を吸っていた。その横にはすでにあの巨乳女がスタンバイしていて、こんな時にも失笑しそうになる。 そうか、慎之介よりも、あの女の方が乗り気なのか。 そんなことを今更知りながら、目の前に差し出された何かを飲み下した。 「ハルチさぁんかっこいい!!」 鳴りやまない音は、永遠に俺を解放しない。
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