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「うう~、じゃあ、また今度一緒に帰りましょーね?」
「はいはい」
冷たいですぅ、酷いですぅ、と某家族向けアニメのキャラクターのように呟くキホが慎之介に連れられてやっと遠ざかる。
時刻は7時30分だった。
ポケットを弄って、アメスピのボックスが空になっていたのを思い出した。嗚呼、と意味もなく喉の奥で呟いて、息を吐く。
「……」
指定された時刻まで、十分に時間があることを確認し、いつも通りのコンビニへと足を動かした。
朝のコンビニはそこそこの賑わいをみせている。
夜の街からあっけなく社会人の街にシフトチェンジしたコンビニも、例外なくビジネスマンが疲れきった顔で列をなしていた。
ここにいる人間のほとんどが時間のない生活を強いられながら、長蛇の列に眉を寄せている。
その中に自分が混ざる気になれずに、ほしいものがあるわけでもなく雑誌のコーナーへと歩いた。
その場にさえスーツ姿の疲れたオヤジがいる。
俺もこの先3年後にはこの場にいるような死んだ顔の社会人とやらになっているのだろうか。その姿を想像すると胸糞が悪い。
労働は死だ。
働いたら負けとまでは行かないが、労働が隷属であることに違いはない。
時間を対価に金をもらう。現世のシステムではそれ以外で金をもらう方法がないがゆえに、全員が死んだ顔のままに労働を強いられている。
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