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目の前にある捲り散らかされたジャンプを手に取って、ぱらぱらとページを捲った。
そこに描かれている友情も、努力も勝利もこの世には無い。だからこそ、男はロマンを求めてジャンプを買い続けるのかもしれない。この分厚い紙の束には、言い知れぬ夢があるのだろう。
追って読んでいる漫画をぱらぱらと見て戻すと長蛇が消え去っている。
ピーク時間を勝手に過ぎてくれたことに感謝しながら、社会の動きとは逆行している大学生のモラトリアムに笑えた。
「いらっしゃいませ~」
笑顔の店員はいつも見るやる気のなさそうな浮浪者ルックの男性店員とは違う。
いかにもフレッシュそうな見た目の女だった。研修中と書かれたネームプレートに視線を落として、もう一度目線を合わせた。
「……アメスピライト一つ」
「……はい」
いつもと同じように呟いて、女店員が怪訝そうな顔を浮かべるのを見た。そのすぐあとに後ろを振り返った女が、アメスピのターコイズに触れたのを見た。
「二つ隣の、黄色いやつ」
「あ、すみません……!! こちらですね……。480円です」
「じゃ、これで」
呟くと同時にポイントカードの提示を要求されて、持っていないと答えた。
正確には持ってはいるが、出すのが面倒臭いだけなのだが、もはやそれを言うのも面倒で釣銭を待つのと同時に何の気なしに窓の外を見上げた。
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