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相手に支払われることを好まず、女扱いされることを好まず、男に声を掛けられてもしれっとしている。まるで男よりも男らしい。
そこまで考えて、はっとした。
俺は、こいつのそういう部分が楽なのかもしれない。
ヘンに女らしく振る舞っている女より、男のようにさっぱりした性格が単に楽で、物珍しさで惹かれているのかもしれない。そう思うとしっくりきた。
藤のように、気にしなくとも隣に居られるような存在。そんな空気があったのかもしれない。
別に女が嫌いだとか言うつもりはない。ただ、キホのような面倒な女に辟易としているのは確かだ。その点こいつは我が道を行く、男よりも男らしい女だ。話し相手にはちょうど“楽”だった。
朝佳が良く知った道を歩いて行く。まるでそこに赤い絨毯が敷き詰められているかのように、真っ直ぐ淀みなく歩く。
俺はただその隣について、この先に続く場を思っては苦笑いを噛んだ。
「お前、どこ行くつもりなくわけ?」
問わずともわかる疑問を投げかけて、どうでも良さそうに振り返るシラケた目に視線を奪われる。
「見てわかんない? 学校だけど」
その先には、俺があまり真面目に来ていない施設が待ち構えていた。
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