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じりじりと頭皮を照りつけてくる朝日は、もはや昼間の日差しようだ。あまりにも暑い。時刻を確認しようと腕時計を見ると、短針は10を回っていた。
俺と朝佳はどれほどの間、あの門の前ですったもんだと声を交わしていたのだろうか。
時空が歪む。あの束の間の会話は、朝佳の世界にとって、どれだけ無駄な時間だったのだろう。
少しでも無駄から外れた時間になっていればいいと思う俺は、ただの愚かな男だ。
歩き出すスニーカーが、焼けたアスファルトに擦れてジリ、と音を上げていた。
夏はどこまでも迫ってくる。
すぐ何時間か後に訪れる真夏の灼熱を思っては、足早にマンションを目指した。
マンションの一室に入った瞬間、温度差に鳥肌が立つ。
どうやらエアコンをとめ忘れていたらしい。
どこまでもエコに対抗している自身の生活を感じながら、思考するのも面倒で、エアコンを切ってすぐに風呂場に移動した。
朝佳は、週に2、3度ほどしか自宅の風呂やベッドに入る時間がない。それを考えると今当たり前のように親の金で怠惰に過ごしている自分が、可笑しくなってくる。
あまりにも人間の出来が違い過ぎる。
朝佳もこの辺に家を借りた方が良い。
それとも、わざわざ深夜に働かなくてはならないような事情でもあるのだろうか。
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