プレイリスト 「プロローグ」

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プレイリスト 「プロローグ」

ここは地獄かと思う。 毎度毎度、同じことを思いながら、それでも俺はその場にいた。 時刻はおそらく2時頃。丁度煙草も切れて眠気も最高潮に到達する時分に、なぜか俺は、カラオケボックスの端に追いやられている。 視界には換気扇が吸いきれない煙と誰かの汗と無駄に暗い照明だけが映っている。その奥の方で3年の軍団が狂ったように歌い踊っていて、この景色には何度遭遇しても慣れそうにない。 別に嫌いでも何でもないが、好きかと言われたらノーだろう。 「ハルチの一気が見たくて?」 「ハルチの一気が見たくて~本当の声を聞かせておくれよ~」 名曲に合わせて最低のコールが回される。そのコールに、この時間になっても生き残っている1、2年は否応なしに潰される。 目の前にはべろべろに酔って足をふらつかせた3年の女がいた。そいつは「ハルチ」と名前がかかった瞬間に俺を見て、にたりと笑った。 ああ、俺か、とぼやりと考えては息を吐いた。 そのまま俺の座るテーブルの前には、カラオケ店のクソまずそうな安いウイスキーのロックが5杯。 「のーんで~! 飲んで飲んで~! の~んで~どこ~までも~!!!」 その声に、拒否する間もなくまずい酒を流し込んだ。
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