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ブルーハーツのTRAIN-TRAINに合わせて酒を飲まされる。あれは凶器だ。もはや俺の愛するブルーハーツはそこにない。あるのはただ人を潰す為の音頭だ。
そう、わかっていながら、全ての酒を飲み終えて、俺はシケた酒のマズさに顔を顰めてはマイクを持った。
その途端にボルテージが吹っ切れる。ぎゃあぎゃあとうるさい女が抱き着いて、俺の服によれたファンデーションを擦り付けるのを感じながら、それでも真っ直ぐに機械の箱を睨む。
そこには相変わらずロックな男が映り込んでいた。睨むように、この腐った世界を蹴り上げるように。汚く美しく、汗を流している。
ディスプレイで歌うロックンローラーの姿を無視して、周りの奴らと同じようにコールを回そうと、縺れる眠気を吐くように声を上げた。
ブルーハーツに懺悔する。
俺は間違いなくやつらの雄姿をぶっ潰す替え歌を歌っている自覚がある。
クソ狭い室内はどこまでも熱く揺れていて、まるでヤク中の患者が集団でサイケデリックを引き起こしているようだ。それがまた地獄を思わせた。
お前たちがクソな世界を終わらせようと叫ぶ声は今他の誰かの意識を奪うための道具として使われてんぞ、最悪だろ。俺は最悪の気分だ。
だからこそ、歌い終えた瞬間に吐くふりをしてその場を出た。
「ちょー! ハルチだいじょーぶー?」
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