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どこか狂ったボリュームの声に辟易しながら軽く手を上げてその場を出る。
その女の名前が次のコールにかかったのを見て、助けることもなく廊下を歩きはじめた。
個室から出ると馬鹿みてえな臭いと熱気から解放されて、それだけで俺はこの肩を占めている重荷が一つ降りたような気がした。
店内はボックスの中とは違って、明るく照らされている。
半地下に位置しているこのカラオケ店は、おそらくいつでもこの蛍光灯に、人工的に明るく照らしだされているのだろう。
眠らないこの町の象徴のようだ。
そう、感傷的に考えて息を吐いた。
くだらない。
実にくだらないことを考えた自分に寒気がして地上へと歩く。
途中、フロントで欠伸をかましていた深夜バイトの男が俺をちらと見て、テンションの低い挨拶をぶつけてくる。
俺もそれに控えめに頭を下げて、おそらく何度もゲロに塗れただろう階段をゆっくりと踏みしめて、地上へと足を踏み出した。
煙草でも買いに行くか、と誰に言うでもなく肺の奥で呟いては周りを見遣る。
周囲は毒々しく煌びやかなネオンが繰り広げられていて、俺はそれに感動を示すでもなく近場のコンビニへと足を進めていた。
道端にはハゲ散らかった体脂肪ジジイが転がっている。
何が悲しいのか、めそめそときたねえ涙を落としながら汚物を口から吐き出してエグエグとえづく。
その光景に、再びここは地獄かよ、と思いながら、控えめに男の横を素通りした。
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