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横切る途中にきつい吐瀉物の臭いが俺に絡む。
喫煙者の鼻が悪いっつったのはどこのどいつだ。俺の嗅覚は超正常なんですけど。
クソどうでもいい感動を胸に握りつぶしながら、コンビニに入る。カウンターで今にも寝そうな男に呟く。
「アメスピライト2つ」
俺の言葉に従うように、二箱の煙草と交換で紙幣が一枚去っていく。
近い未来、この二つのボックスの購入が、紙幣一枚だけでは済まされなくなる日が訪れるのだろう。
思考しては途中で切り上げた。
財布の中には紙幣が3枚。全て違う偉人の顔が覗いていた。これくらいあればまあ、最悪何が起きても何とかなるか。
慣れた指先でボックスから煙草を一本取り出しては、火を点けて吸う。僅かな時差で、酔いが回る感覚が指先を撫でて思考が痺れた。
時刻は午前二時と三十四分。スマホで確認して、また紫煙を吐く。
吸って、吐いて、ただそれだけの行為を止めることもできずに何年も続けている。まあ、止める気もないが。
さてこれからどうするか。
回り始めた景色に煙を浮かべては自問している。
低い空に浮かぶ紫煙は、遥か彼方に聳える雲と同じ色をしているように見えた。だからなんだ。別に何でもない。
ただ、そんな気がしていただけだ。
戻ってもまた地獄だと知っているが、あそこにいなくともまた面倒なのは明白だ。そのことを酔って正常ではない頭で考えたくなかった。
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