お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

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「ここには、頻繁に新しいお客様がやって来る。賑やかなコンと、修行好きなギンがいる。雨が上がれば、こうして水たまりの中のひがし茶屋街を見ることができる」 ようやく顔を上げた私は、私を見つめていた雨天様と視線が交わった。 優しく弧を描く瞳が、なにを言いたいのかわかる。 「今はもう、寂しさを感じる余裕も、悲しみに暮れる時間もない。私は、賑やかな日々を送ることに幸福を感じ、先代の意志とこの屋敷を守っていくことに誇りを持っているのだ」 それでも、最後まで黙っていたくて、無言のまま雨天様を見つめていた。 「だから、私はここから出られないことを嫌だと感じたことは一度もない。きっと、これからもそうであろうな」 「うん……」 きっと、それが雨天様の本心。 そう思った時、頬に雫が落ちて来た。 「ああ、そろそろまた降らせることになりそうだ」 ひとり言のように言った雨天様の言葉通り、空はいつの間にか再び雨雲を呼び戻していて、パラパラと雨粒が降って来た。 「晴れ間をあまり見せてやれなくてすまないな……」 傘を差そうとした時にそんなことを言われて、私は少し考えた末にニッコリと笑った。
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