お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

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「……そうか。この作り方に辿り着くまでに随分と苦労したのだが、ひかりのおばあ様は料理の腕がよかったのだな」 「えっと、うん……。確かに、おばあちゃんの料理はどれも美味しかったよ。でも、小豆の味は似てる気がするっていうだけで、雨天様が作った小豆の方が美味しいと思う」 おばあちゃんは長生きしたけれど、雨天様と比べれば何百年どころじゃないほどの差がある。 その間、甘味作りをして来た雨天様にとって、『おばあちゃんが作ったものと似ている』と言われたら複雑な気持ちになるだろう。 「あの、本当だよ?」 それが一瞬戸惑った理由だったのだけれど、結局口にしてしまった私は、慰めにもならない言葉を続けることしかできない。 だけど、雨天様の小豆の方が美味しいと言ったのは、嘘なんかじゃなかった。 「別に気を遣わなくてもよい。ひかりが言いたいことは伝わっておる」 「心を読んだの?」 「読まなくてもわかるよ」 苦笑した雨天様は、「本当だ」と付け足した。 私はその言葉を信じると言う代わりに、小さく首を縦に振る。 「だが、作り方を教えても、ひかりには作れない」 返って来た答えに落ち込みかけたけれど、すぐにどこかで納得した私がいた。
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