お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

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「そりゃそうだよね。神様が作ってるんだから、超秘伝のレシピとかなんだろうし、ギンくんだって二百年近く作り続けてるんだもんね」 アハハッと笑ったのは、心の中にある気持ちをごまかすため。 納得はできていても、おばあちゃんの味に似ているような気がしたから、できればレシピを教えてもらいたかった。 「いや、そういうことではない。同じように作れるようになるにはそれ相応の修業が必要だが、もし仮にそれを経て作れたとしても、ひかりが帰る時には忘れてしまう」 「え?」 あ、そっか……。 首を傾げた直後にハッとすると、雨天様が困ったような面持ちを見せた。 そこに、微かな笑みが乗せられる。 「ひかりは、いずれあるべき場所に帰らなくてはいけない。その時になればすべての記憶が消え、ここでの日々を思い出すことはない」 困り顔で微笑む雨天様の声は、心に寄り添うように優しかった。 それはまるで、私を傷つけないようにするために思えた。 最初から聞かされていた決まり事を話すだけなのに、私を労わるような声音で紡いでくれた雨天様はとても優しくて……。 だけど、たった数日でここにいることが当たり前になりつつあった私を、同じくらいの優しさと厳しさでそっとたしなめた。
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