お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

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「作り方を教えてあげることはできないが、明日は小豆を炊くところを見せてやろう」 「いいの?」 「ああ。目の前で作るところも見ると、少しは気が晴れるかもしれないだろう」 「うん。ありがとう」 気が晴れるかはわからないけれど、雨天様の気持ちは嬉しかった。 だけど、家事はきちんとこなしたかったし、コンくんに迷惑を掛けたくもなかったから、明日は少しだけ早起きをして掃除をしておこう。 「よい心掛けだな」 「また読んだの?」 「なにを言っておる。今のは声に出ておったぞ」 「え? 嘘……」 「嘘だ」 からかわれたことに気づいて唇を尖らせたけれど、雨天様はなぜか楽しそうにしている。 クスクスと笑う姿は、普通の青年と変わらないような気がして、こうして話していると雨天様が神様だってことを忘れてしまいそうだった。 だけど……。 雨天様たちは、人間じゃない。 この地に棲む雨の神様と、双子の狐の神使。 人間である私は、ずっとここにいることはできない。
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