お品書き【四】 おはぎ ~別れるその日まで~

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「おう、コン。またデートかい」 「お遣いにございます」 「相変わらずお堅いなぁ」 近頃は、猪俣さんのところに行くと、決まって猪俣さんとコンくんがこんなやり取りをする。 同じシーンの繰り返しに、私は今日も小さく笑った。 「本当は満更じゃないんだろう?」 「猪俣様はしつこいですよ」 からかう猪俣さんと、決まったセリフを返すコンくんと、そんなふたりを見てクスクスと笑う私。 三人の立ち位置が、すっかり定着してしまっている。 「本日は、小豆ともち米をお願いしておりましたが……」 「ああ、ちゃんと仕入れてある。小豆はいつもよりちょっといいものが手に入ったぞ」 「ありがとうございます」 「次の注文は?」 「明後日までに、和三盆をご用意いただけますか? それと、いつもの飴屋さんの水あめも」 「おいおい、和三盆は早めに言ってくれって言ってるだろう?」 「申し訳ございません。私も出かけに言いつけられたものですから」 猪俣さんは盛大なため息をつきながらも、承諾してくれる。 これも、もうすっかり見慣れた光景だ。
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