お品書き【四】 おはぎ ~別れるその日まで~

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「美味しい……」 色々な感情を噛み締めるように、静かな客間に小さな声が響く。 「ああ……。でも……できることなら、私が彼女を幸せにしたかったなぁ……」 そして、消えた言葉を追うように、切ない想いが溶けていった。 悲しみも寂しさも、恋人への愛も幸せだった日々の思い出も、そこにはすべてが込められているような気がした。 「お客様、ご縁というのは不思議なもので、来世でもまた巡り合う愛もあるものです。ですから、どうかそんなお顔をなさらないでください」 まるで、心に寄り添うように紡がれた言葉。 私は来世なんてわからないけれど、その言葉通りになることを願わずにはいられない。 「じゃあ、また彼女と……それから、あいつとも会えたらいいなぁ」 お客様がそっと瞳を細めた時、全身が光り始めた。 もう何度も見た光景だけれど、こうして見るといつもホッとする。 このお客様もあるべき場所に帰ることができるんだ、と。 そして同時に、自身のこれからのことを考えて、ひとり密かに不安になってしまう。 そうこうしているうちに、「ありがとうございました」という言葉を残し、お客様は姿を消してしまった。
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