お品書き【五】 上生菓子 ~神様からの贈り物~

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「……そうか」 たぶん、雨天様は心を読んだわけじゃないと思う。 なんとなくだけれどそう感じていると、困り顔で微笑まれた。 「長く一緒にいた分、ひかりにとっては後ろ髪引かれるような気持ちもあるだろう」 〝ひかりにとっては〟と強調されたような気がして、笑みを繕おうとした口元が歪みそうになった。 私だけなんだ、という現実がますます寂しさを増幅させる。 「布団やちょうどよい湯加減の風呂は、気持ちがよいと思うだろう?」 「え?」 突然なんの話? 私がそう訊く前に、雨天様が再びゆっくりと歩き出した。 「自分自身にとって心地好いものというのは、心と体を癒やしてくれる。それは、とても大切なことだ」 話しの意図が見えないなりに頷くと、その曖昧な気持ちを見透かしたように苦笑されてしまった。 なんとなくいたたまれなくなった私に、雨天様は足を止め素に歩いていく。 「だがな、そこにずっといるわけにはいかないのだ」 そのあとを追いながら、雨天様がなにを言おうとしているのかを悟る。 同時に、胸の奥が締めつけられた。
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