お品書き【五】 上生菓子 ~神様からの贈り物~

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「夢なんて、案外そこかしこに転がっている石から見つかることもあるものだぞ」 「え? 石……?」 「石というのは〝ものの例え〟だが、別に大きなきっかけばかりが夢に繋がるというわけではない、ということだ」 怪訝な顔をした私を見て、雨天様がおかしそうにクスリと笑った。 からかわれていないのはわかるけれど、子どもを見るような眼差しに思わず唇を尖らせたくなってしまう。 「縁やきっかけがいつどこに転がっているのかなんて、神様ですらわからない。だから、そうして悩むくらいなら、なんでも見て、聞いて、触れて、自分の心と体で感じてみればよい」 「それでも、もし……来年までに見つけられなかったら?」 「ひかりは、随分と心配症だな」 雨天様の言葉で少しだけ心は軽くなったけれど、不安を拭い切ることができずにいると、困り顔で微笑されてしまった。 我ながら深く頷けるものの、それが本音なんだから仕方ない。 「よいか、ひかり。夢なんてものは、別にいくつになっても見つけることはできる。退職してから大学へ行ったって、年老いて身体が動かなくなってから恋をしたってよいのだから」 ずっと未来のことで例えられたから上手く想像できなくて、すべてには共感できなかったけれど……。 焦らなくていい、と言ってくれていることはしっかりと伝わって来た。
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