お品書き【五】 上生菓子 ~神様からの贈り物~

13/39
前へ
/172ページ
次へ
やっぱり、もっとここにいたかったな、と思ってしまう。 決して口にはしないけれど、心の中ではその想いが強く主張していた。 美しくて優しい神様と可愛い神使たちとの、たったの二週間。 信じられないことばかりの日々は、私の心に優しく寄り添ってくれていた。 だからこそ、余計に名残惜しくなるのだろうけれど、最後にこうして雨天様と話せてよかった。 寂しさを隠すことはできなくても、きっと笑顔でお別れを言えると思うから。 「ひかりなら、大丈夫だ」 「雨天様がそう言うのなら、そうなのかな」 「ああ。ひかりがあるべき場所に帰っても、私はここからずっとひかりのことを見守っている」 「え?」 小首を傾げると、雨天様は足元にあった小さな水たまりに視線を落とした。 雨天様が手を翳すと、いつかのようにひがし茶屋街の景色が映る。 「こうして私が映せるのは、なにもひがし茶屋街だけではないのだ」 「そうなの?」 「人間のお客様の場合、その者が天寿を全うするまで姿を見ることができる」 目を小さく見開いた私に、雨天様は頷く。 その眼差しを受け止めながら、私も視線を落とした。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

344人が本棚に入れています
本棚に追加