お品書き【五】 上生菓子 ~神様からの贈り物~

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「この傘には、ひかりとおばあ様の想いが詰まっているのだろう。だからこそ、ひかりにはコンの声が聞こえ、私の姿も見えた」 「うん……」 「もしかしたら、ひかりのことを心配したおばあ様の魂が、この傘とともにひかりを呼び寄せたのかもしれないな」 もしそうだったとしたら、おばあちゃんは最期に最高のプレゼントを残してくれた。 そう考える方が幸せだから、雨天様の言う通りだと思うことにしよう。 「私も長くここを守っているが、こんなことは初めてだ。だが、この縁を幸福に思うよ」 仰いだ空は高く青く、雨模様とは程遠いけれど……。 おばあちゃんは大好きな雨の日のように、嬉しそうに笑っているような気がした。 「この傘を買ってもらった時におばあちゃんから聞いたんだけど、スズランの花言葉は〝幸福が訪れる〟なんだって」 「それはまた、奇遇だな」 「うん。本当にその通りだったみたい」 ここに訪れたのは私の方だったけれど、私には確かに幸福が訪れた。 あんなにも悲しくて心細かった私を迎えてくれた雨天様たちのおかげで、今はもう金沢に着いた時の気持ちとは全然違う。 晴れ晴れとしている、とまでは言えなくても、心から笑顔になれたから。 だから、きっともう、大丈夫なんだと思う――。
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