お品書き【五】 上生菓子 ~神様からの贈り物~

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「ひかり様」 ほうきをギュッと握りしめていると、コンくんがいつものように私の名前を呼んだ。 顔を上げた私に、目の前までやって来たコンくんが破顔する。 「ひかり様がギンの姿が見えなくなっても、ギンにはひかり様の姿が見えておりますし、変わらず声も届いております。ですから、あとでぜひ話しかけてやってください」 「うん……」 「恐らく、ひかり様がここを去るまでに私の姿も見えなくなるとは思いますが……」 「え?」 ギンくんだけじゃなく、コンくんのことまで見えなくなるなんて……。 せめて最後まで、みんなのことを見ていたかったのに。 「当たり前のことですが、神様と比べると神使の力はとても弱いのでございます。ギンのことが先に見えなくなったのは、恐らく私よりもギンの方が少しだけ力が弱いせいなのですが、それでもさほど差異はございません」 大丈夫だと思っていても、やっぱり寂しさが強くなる。 今朝までの日常になりつつあった時間には、もう決して戻れない。 おばあちゃんが亡くなった時も、今も。 この世にはなにひとつ当たり前のことなんてないのかもしれない、と感じさせられた。
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