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コンくんの姿が見えなくなったのは、部屋の掃除が終わる頃だった。
「コンくん、終わったよ!」
雑巾で窓を拭き終わって振り返ると、コンくんの姿が見当たらなかった。
部屋から出て行ったとは思わなかったのは、コンくんは黙ってそんなことはしないから。
「コンくん……?」
確かめるように読んでみても、声が聞こえない。
返事をしてくれたはずのコンくんの姿を想像して、意図せずに涙が込み上げて来そうになった時、開けていた襖の向こうに雨天様が現れた。
「ひかり、客間においで」
「雨天様……」
私の表情を見てすべてを悟ったような顔をして視線を下げた雨天様の傍には、きっとコンくんがいるんだろう。
雨天様は、コンくんの背丈の辺りで頭を撫でるような仕草をすると、私に笑みを向けた。
「コンならここにいる。だから、なにもそんな顔をすることはない」
「うん……」
「ほら、客間に行こう。ギンが待っておる」
唇を噛みしめて頷くと、雨天様が優しく私の手を引いた。
その手は、さっき私の手を握ってくれたコンくんの体温と同じように、とても温かかった。
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