お品書き【五】 上生菓子 ~神様からの贈り物~

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「あのね、雨天様……」 震えそうな声で切り出した私に、雨天様は笑みを浮かべているだけだった。 今になって言いたいことが溢れて来るような気がしたけれど、すべてを伝えられる時間なんて私にはもう残されていないから、その中からたったひとつだけを掬い取った。 「私……ここに来るまでよりもずっとずっと、雨が大好きになったよ」 視界が歪んでいくのは、きっと込み上げてくる熱のせい。 だけど、今だけは全身を包む光のせいにしよう。 「ひかり」 ばやけていく瞳の中で、雨天様がとても嬉しそうに破顔した。 それはまるで、雨上がりの空に架かる、美しく鮮やかな七色の虹のように。 「幸せであれ。ひかりの人生は、まだ始まったばかりだ」 優しい声音で紡がれた、神様の想い。 それが鼓膜をそっと揺すぶった直後、全身が柔らかな温もりに包まれて、私の意思に反して意識がゆっくりと遠退いていった。 『あなたの未来に幸福の縁がありますように』 そのさなか、誰かが私の耳元で、そっと囁いたような気がした――。
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