お品書き【二】 どら焼き ~居場所を失くした者~

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「さきほどのような形が、ここに来たお客様のあるべき去り方なのです」 雨天様とギンくんがテーブルの上を片づけ、コンくんが玄関にかけてあるという暖簾をしまったあと、再び客間に全員が揃った。 そして、例によって雨天様の命令で、コンくんが説明をしてくれることになった。 「光って消えるのが?」 「いいえ、消えると言うと少し語弊があります。我々の前からは消えましたが、お客様自身が消えるのではなく、あるべき場所に帰るのです。例えば、さきほどのお客様は恐らく主の魂がある場所へ、死んだ者なら天国か地獄へ……という風に」 「どこに行くかは、コンくんたちはわかるの?」 「いいえ。それは、我々が知るべきことではないのです。ただし、人間のお客様の場合にはわかります」 コンくんは、「ひかり様のように」と笑顔で付け足し、ギンくんを見たあとで視線を私に戻した。 「ひかり様は、記憶こそなかったはずですが、きちんとご自身でお帰りになっています。私とギンはそっとその後をつけ、ひかり様が家の中に入ったあとで記憶を消す術をかけました」 「そういえば、ここから帰った時のことはまったく覚えてないんだよね」 「それが普通なのです。むしろ、それだけしか忘れていないのは奇跡だと思ってください」 コンくんは気まずそうに笑うと、雨天様をチラリと見た。 雨天様は私たちの話は聞いているけれど、口を挟もうとする様子はない。
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