お品書き【二】 どら焼き ~居場所を失くした者~

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「だが、そもそもお客様と触れ合うということ自体、私ですら滅多にないからな。それに、ひかりがここで長く過ごすことがないように、ひかりのことも早々に解決すると約束しよう。だから、案ずることはない」 「うん、わかった」 「いい子だ」 これは、雨天様の口癖なんだろうか。 子ども扱いされているようで複雑な気持ちにもなるけれど、不思議と雨天様の口から聞くのは嫌じゃなかった。 昔も言われたことがあるような気がするけれど、もしかしたら幼い頃にでも両親や祖父母に言われていたのかもしれない。 もう思い出せないものの、なんだかそんな風に思っていた。 「日が暮れてきたな。荷物は明日取りに行きなさい」 「え、でも、着替えとか……」 「着替えなら、どこかに浴衣があるはずだ。コンに用意させよう。ギンは風呂に案内してやりなさい」 「はい」 戸惑う私を余所に、コンくんとギンくんは雨天様の言葉に返事をし、ギンくんが私を見た。 「ひかり様、こちらです」と言われてしまい、選択権が消えてしまったことを自覚する。 仕方なくギンくんについて行けば、ヒノキで造られた広い浴槽がある浴室に誘われ、その大きさに目を見張った。 驚くことはまだまだあるということを知らない私は、贅沢な空間に少しだけ戸惑いながらも開き直ることにして、ひとまず温かい湯船に身を沈めた――。
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