お品書き【三】 栗羊羹 ~神様たちと過ごす日々~

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「雨天様のお部屋は、一番奥のこちらです。雨天様がいらっしゃらないので中はお見せできませんが、雨天様のお部屋以外であれば屋敷内は自由に行き来していただいても構いません」 「お屋敷内だけなの?」 「お庭もあとでご案内するように言われるとは思いますが、屋敷内とは比べ物にならないほどに広く、迷えば自力では戻れなくなります」 「わ、わかった……」 穏やかじゃない話に、喉をゴクリと鳴らしてしまうと、コンくんがニッコリと笑った。 そのまま私を見上げ、「大丈夫ですよ」と優しく言ってくれた。 「家にお帰りになりたい時同様、庭にご用があればお供いたします。それ以外にもなにかお困りの時などは、遠慮なくコンとギンをお呼びください」 「えっと、部屋に声を掛けに行ってもいいってこと?」 「それはもちろんですが、お互いがこの屋敷にいる時であればその場で名前を呼んでいただくだけで構いません。我々は、ひかり様のお声が聞こえますから」 神様や神使がなんでもできるわけじゃないというのはわかっているけれど、なんだかんだで便利そうだなとは思う。 頷きながらそんなことを考えていると、コンくんが「次の予定をこなしましょう」と口にした。 小首を傾げた私は、家に荷物を取りに行くことを告げられ、急いで最低限の身支度だけを整えた。 そして、今夜のお客様を迎えるために下拵えをしている雨天様とギンくんに声を掛け、コンくんと一緒にお屋敷を出た。
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